風邪・インフルエンザと“口腔ケア”の意外な関係

医療法人文亀会 井上歯科医院
冬は1年の中でも特に体調を崩しやすい季節です。
「風邪をひきやすい」「喉が痛い」「インフルエンザが心配」
という声が増えるのも、まさにこの時期。
実は、冬の健康管理には“口腔ケア”がとても重要であることをご存じでしょうか?
口の中を清潔に保つことは、風邪やインフルエンザ対策の一助になると報告されています。
この記事では、冬の免疫低下のメカニズムから、口腔環境が全身の健康にどう影響するのか、そして今日からできる簡単な口腔ケア習慣まで、分かりやすく解説します。
冬に免疫力が低下しやすい理由とは?

冬は気温が低く、乾燥するため、ウイルスが活動しやすくなります。
さらに、人の免疫力も季節の影響を受けやすいと言われています。
(1)気温低下による体温の低下
体温が下がると、体内の免疫細胞が働きにくくなるとされています。
特に手足が冷えるほど体温が落ち込み、免疫機能に影響が出ることがあります。
(2)乾燥でウイルスが増えやすい
空気が乾燥すると、
- ウイルスが長く空気中を漂いやすい
- 鼻や喉の粘膜が乾燥しバリア機能が低下する
といった環境が整いやすくなります。
(3)生活リズムの乱れ
年末年始の疲れや、運動不足、睡眠時間の減少も免疫力低下につながります。
特に40〜50代は仕事・家庭ともに忙しく、疲れが蓄積しやすい時期です。
実は関係が深い!風邪・インフルエンザと“口の中の菌”
冬の体調管理では「手洗い・うがい」に注目されがちですが、実は “口の中をきれいにすること”も重要 だとされています。
(1)口腔内には数百種類の細菌が存在する
口の中には常在菌が多数存在し、健康なときはバランスが保たれています。
しかし、冬の乾燥・ストレス・睡眠不足などでこのバランスが崩れると、細菌が増え、口腔環境が悪化しやすくなります。
(2)細菌が喉へ移動しやすくなると、感染リスクに影響
口腔内の細菌量が多いと、喉などへ細菌が移動し、風邪などに影響すると報告されています。
特に高齢者においては、口腔清掃によって肺炎のリスク低下につながったという研究もありますが、年齢に関わらず、口腔内を清潔に保つことは全身の健康維持に役立つと考えられています。
(3)インフルエンザウイルスと口腔ケア
口腔内の細菌が多いと、ウイルスが体内に侵入しやすくなる環境が整うともいわれています。そのため、普段から丁寧に歯磨きを行うことが、感染対策の一助になるという報告もあります。
冬に口が乾燥すると免疫力にどんな影響がある?
冬は“ドライマウス”が起こりやすい季節です。
暖房の使用や空気の乾燥で唾液が減ると、実は風邪のリスクにも関係します。
(1)唾液にはウイルスを洗い流す働きがある
唾液には、
- 抗菌作用
- 粘膜保護
- 自浄作用
などの働きがあります。
唾液が減ると、これらの作用が低下し、菌やウイルスが増えやすくなります。
(2)口呼吸が増えると喉が乾燥しやすい
冬は鼻づまりや乾燥で口呼吸になりやすく、
喉の乾燥 → バリア機能の低下 → 風邪に影響
という流れにつながることがあります。
(3)乾燥による口臭・歯周病リスクの上昇
乾燥で細菌が増えやすくなり、口臭や歯周病の悪化にも影響するとされています。
今日からできる!冬の“免疫力を守る”口腔ケア習慣

風邪やインフルエンザのシーズンだからこそ、普段の口腔ケアを見直すことが大切です。
(1)歯磨きは「朝・夜+帰宅後」が理想
特に「夜の歯磨き」は重要とされており、就寝中の細菌増加を防ぎます。
冬場はさらに、帰宅後の歯磨きを取り入れる人も増えています。
(2)舌の汚れ(舌苔)を優しくケア
舌に白い汚れがたまると細菌が増えやすくなるため、専用ブラシで優しくケアするのが推奨されています。
(3)こまめな水分補給で口の乾燥を防ぐ
冬は「喉が乾いた」と感じにくい時期ですが、脱水は口腔乾燥を招きます。
白湯や常温の水をこまめに飲む習慣が有効です。
(4)加湿器を使い、室内の湿度をキープ
湿度40〜60%が理想とされ、ウイルスの活動を抑える環境を作りやすくなります。
(5)定期的に歯科検診を受ける
冬のトラブルを未然に防ぐため、歯科でのクリーニングや口腔状態のチェックは、健康管理の一環として役立ちます。
冬の健康を守るために──「口腔ケア」は意外と重要な習慣

冬は体調を崩しやすい季節ですが、「歯磨き」「舌ケア」「乾燥対策」といった日常的な口腔ケアを丁寧に行うことで、口腔内の細菌バランスを整え、全身の健康を維持しやすくなります。
風邪・インフルエンザ対策は手洗いうがいだけではありません。
“口の中を清潔に保つこと”も、冬の健康づくりに役立つといえるでしょう。
忙しい時期こそ、無理のない範囲でできるケアから始めてみてください。







